誰かさんの不思議

音楽活動の合間に感じる不思議なことを雑談しています。

音織物

太い音、と表現される音があります。
雑誌か何かの記事に「太い音がうんぬん」とあり、そういう表現を知ったのだけど、初めてこの言葉を知った時は「太い音って何?」と思ったものです。音色に太いも細いもないだろう。あるとすれば重厚かどうかだろうけど、そんなのは音を積み重ねればどうにかなるんじゃないかね、ん〜?ってな感じ。
その後、海外製のシンセを購入して音を聴いてみると、うん、確かに太い。太いとしか言いようがないな、と感じたのです。つまり太い音と細い音というものがある。ただ、どうも色々と見聞きすると、太い音というものが優れているもの、と評されているようなんですね。細い音というのはあまり評価されない。
そんな周りの声に誘われてビンテージものではないけど、太い音の出るシンセを使ってみたことがありました。でも自分には合いませんでした。存在感がありすぎて巧く解けない。あれこれ考えた結果、多分、比較的楽器の数が少ない編成の場合、威力を発揮するんだろうなと結論しました。楽器の数が少なくてそれぞれの音が細かったらアンサンブルが貧相になるだろうということで。
反物だとか織ったことないけど、音楽を作るのは織物に似てるんじゃないかなと思います。私は細い音を幾重にも重ねて力強い音楽ではないけど、透明感のあるもの、目の前が開けていくように感じるものを織ります。太い音、細い音、どちらが優れているとかじゃなくて、自分の志向に合った糸を選んで織ればいいんですよね。それが多分個性。