あれは映像作家さんとお話ししていた時だったか「楽器だけの音楽より歌物の方が人気あるんですよね」と私が言ったところ、「そんなの当たり前だろ」と返されたことがあります。
世界中の統計をとったわけじゃないから分からないけど、確かにセールスとしてはそんな傾向があるので、その時はとりあえず納得した一方で、どこか腑に落ちない感がありました。
どうして当たり前なんだろう?
人の声に安心感を覚えるから?
同じ音が続いても子音や母音が違うとバラエティ豊かに聴こえるから?
多くの人にとって、音楽(曲)とは何だろう。
以前、ラジオを聞いていた時、そこには水道橋博士さんが出演されていて、ある曲を勧めていたのですが、始終、詞の話をしていました。この詞のこういうところが良い、とか何とか。
それを聞いて「あぁ、この人にとって曲というのは詞のことであって、メロディーやハーモニー、リズムといったものは曲を評価する基準にはないのだな」と思ったのですが、今考えてみると、これって多くの人に言えることなのかなと。
聞くところによると言葉のない音楽を聴いて何かをイメージする、というのは割と特殊な能力らしいです。そのイメージが制作者の意図通りかどうかは関係なく。
こういう話を聞くと、多くの人は、音楽だけを聴いても何も感じることができないので、詞の内容からイメージを作り出している、もっと言うと音に合わせた文章を読んで音楽を楽しむという行為としているのかな、と思うわけです。
でもそれはそれでいいと思います。
音楽の楽しみ方なんて人それぞれ。
文章を読みながら音を聴いてもいいし、音を聴いて想像してもいい。
ただ、答えを知りたい人というか、自分で想像することを楽しみとしない人の方が世の中には多いのだろうな、と。
私に「当たり前」と返した人は、きっとそういうことを分かっていたんだろうな。