誰かさんの不思議

音楽活動の合間に感じる不思議なことを雑談しています。

旅人と花瓶

ある旅人が街に寄りました。賑やかな声に誘われ歩いて行くと中央広場に市がたっています。
「やあ、そこの旅の方。私の焼き物を見て行ってくれよ。」
市場を歩いていた旅人に一人の商人が声をかけました。焼き物を売っているらしく目の前には大小様々の焼き物が置いてあります。焼き物に興味があるのか、旅人は腰を下ろして眺めています。どの焼き物もツヤツヤで、色むらなど一片の曇りもありません。
「これは?」
旅人が尋ねたその焼き物は一つの花瓶でした。
「あぁ、それは昔の手法で作ったものさ。だから他のものと比べると見劣りするだろ?一応、水が漏ったりはしないけど・・・最近じゃさっぱりだね。」
商人の言う通り、その花瓶には光沢がなく、色むらも多い上に形もちょっと歪んでいました。ただ、旅人にはそこに大きな違いを見いだすことができなかったのです。

その旅人は今もその花瓶に花を活け眺めているそうです。